「自分で言ってること、分かってんのか。そりゃたしかに、胴は確率の上じゃ有利だが、それはあくまで長く勝負を見た場合だけだ。もしも二倍より上の目に当てられたら、場合に依っちゃ、今までの勝ちを吐き出すどころか、莫大な借金を背負わせられることになるんだぜ」 「そりゃ、まあ、ね」 極端な例だけど、このチップの山を数指定のゾロ目に賭けて、もし出た場合、百八十倍返しの訳で……ありえない程の負債だ。恐らく、一生、世界の賭場を荒らし回る仕事に従事させられることだろうね。もちろん、色んな意味で本意じゃないけどさ。 「でも、不公平じゃない?」 「あぁん?」 「だってここまで勝てたのって、胴の心理を僕が読むっていう、一方的なルールだった訳じゃない。最後の一回くらい逆転させないと」 「てめぇ、狙った目なんか出せねぇだろ。前提が成り立ってねぇぞ」 「だからさ、純粋な運の領域で競うっていうので、充分、今までと違うじゃない」 「このガキ……」 苦手な珍味を口に放り込まれたかのように、クレインは渋面を作った。 「本当、虫も殺さない様な面してるくせに、変なところで頑固だな」 「褒め言葉として受け取っておくね」 小さい頃は、『勇者の息子』を取り繕うのが巧かった気がするんだけど、いつからこんなに捻くれちゃったのかなぁ。 PR |
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