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「分かりました、その申し出、御受け致しましょう」
 一方、責任者と思しき男と一言二言会話をしていたディーラーが、台の前に戻ってきて、そう口にした。
「それじゃ、ちょっと練習させてね」
 幾ら賽の目に任せると言っても、それを盗み見られたりする様じゃ、話にならない。道具に仕掛けが無いことも調べないといけないし、何度となく試してみる。
「うん、大丈夫かな」
 サイコロに賽振り用の器、それに台も調べてみたけど、不自然なところはない。そもそも、意図的に誰かを負かす仕掛けが出来るなら、ここまで勝ちは積み上げられなかっただろう。勝ち逃げが仁義に反すると言っても、所詮、僕は客の一人だ。頃合を見て切り上げると言われたら、手の打ちようがない。
 或いは、僕に莫大な負けを背負わせる為にここまで肥えさせたという可能性も考えられるけど、この申し出をしたのはこっちの方だ。余り、現実的な線とは言えないだろう。
「それじゃ、いくよ」
 左手で三つの賽をつまみ、器に放り込んで台に叩き付ける。その上で、入念に滑らせることで、目隠しをしたまま、何度も賽を転がす。ここまでやれば、正直、僕自身、中で何が起こっているか、想像もつかない。そっと右手を離して、ディーラーを見遣った。
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