「これで、締め切るわねぇ」 流石は鉄面皮が売りのお仕事だけに、お姉さんは一切、表情を変えない。 だけど、その最終目標は、分かりきっている。初心者の僕に博打の味を憶えさせて、お金をこの賭場に落とさせることだ。その為に一体、どうするか。定石としては最初にそこそこ勝たせて気分を良くさせ、その後に回収するだけど、僕の様な小賢しそうな人間には、それだけじゃ弱いと読むだろう。その上で、序盤の勝ちを浮き彫りにさせるにはどうすればいいか。答は幾つかあるだろうけど、一つの方法は、『最初の一回は負けて貰う』だ。それも、印象に残る方法で、だ。様子見で少額を張ってくるであろう大小、どちらも外せるゾロ目は、その条件にピタリと当て嵌まる。 「二ゾロの、六よぉ。坊やの一人勝ちねぇ」 「ありがと」 幸いにして、早々に二百四十ゴールドもの勝利を収めた僕だけど、正直、的中するとは思っていなかった。唯、お姉さんに思考を読まれ、それを操作される様な事態に陥ることを避けたかった。 言い換えるなら、『こいつが何をしでかすか分からない』という意識を、植え込んだと言っても良い。 「ほぉ、あの姉ちゃん、初めての相手にゃ、ゾロ目を出すのか」 「……」 初心者の僕が言うのもなんだけど、クレインは致命的にギャンブルに向いてない気がするんだ。 「次、イクわよぉ」 たったの一度、穴を当てられただけで眉根を動かす様な人では無いだろう。ここは、牽制が功を奏したと自惚れて良い。だけどそれが過信にならない様に自重しつつ、僕は次の目を紡ぎ出す為、頭脳を動かし始めた。 PR |
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