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「蓋は、そっちで開けて良いよ。但し、袖を捲くった上に片手で、こう、指先でつまみ上げる感じでね」
 一番手っ取り早いイカサマは、出目を全て取り替えてしまうことだ。だけどこの衆人環視の中、今の条件で遣りきるのは難しいだろう。
 他に、対策として考えられるのは――。
「では、私は小に張りましょう」
「額は?」
「――」
 その言葉を口にするに至り、ディーラーは、一瞬、言葉を詰まらせた。
「一ゴールド」
 聴衆が、小さくどよめいた。だけど僕は眉根一つ動かさず受け入れ、彼が器を取り外すのを、じっと見詰めた。
「三、四、六で十三、大だね」
 結果を受け、僕は差し出された一ゴールド分のチップを受け取った。少額とはいっても、最後の勝負も勝つ辺り、随分と乗ってたね。だけど次もこう巧くいくとは限らないから、程々にしないとね。
「おい、坊主……」
「うん、どしたの?」
 何故だか、クレインは相変わらずの不満顔だ。
「こうなること、分かってやがったな」
「うーん。まあ、こうなることもあるかなとは思ってたよ。僕が賽を振ると、運に任せた勝負になるだけじゃなくて、他にも変わる部分が出るでしょ」
「あぁ?」
「賭ける額を、僕が指定しなくなるってこと」
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