ドラゴンクエスト。龍を探求する物語という意味でのネーミングだそうですが、2以降、龍なんて探したっけ……?
( ・ω・) というのは、大人の事情でNGなので忘れないように
「え~と……」
部屋に戻った僕を待っていたのは、想定外の出来事だった。女の子が一人、僕の道具袋を漁っていたんだから。思わず思考が停止して、見詰め合っちゃったりもしちゃうよ。
「とりあえず、泥棒さんだよね? 大声出して良い?」
多分、僕の一生で泥棒にさん付けをするのは、これが最初で最後だと思う。
「わ~! ちょっとタンマ!」
タンマといわれても、悪いことをしてる人を許す訳には――。
「あれ?」
暗くて最初は気付かなかったけど、この子、何処かで見たことある様な――。
「ひょっとして、ルイーダさんの所で会った……たしか、名前はシス」
殆ど初対面だけど、同い年くらいだろうし、呼び捨てでも良いよね。
「げげっ、もう身元割れちゃってんの。こりゃ、逃げても無駄かなぁ」
いやいやいや、そういう問題じゃないでしょ。
「それで、こんなところで何してるの?」
自分の家をこんなところなんて言うのもどうなんだろうね。
「う~ん、あんたの道具袋からすっごいお宝の匂いがしたからさ。何なのかなって思って」
「えっとね。こんな夜更けに忍び込んでる説明には、全然なってないかな」
昼間、真正面から頼めば済む話だよね。
「だって、仮にも義賊のこの私がだよ。普通に頭下げるなんて、面白くも何とも無いじゃない」
「うん、お宝を見るというのを優先させるなら、面白さを求める必要は全く無いと思うよ」
何か、驚きを通り越して、凄く冷めた目で見てる僕が居るよ。
「という訳で、開けて良いよね?」
「何が『という訳で』かは分からないけど、大声出して良いってことだよね」
「だから、それは困るってば」
こんなにも、堂々巡りって言葉が似合う状況も余り無さそうだなぁ。
「じゃあ、僕が明けるから中身の確認だけするっていうのでどう?」
何で泥棒に対して妥協なんてしたのか、自分でもちょっと分からない。
「む~。じゃあ、それで良いよ」
そして君の方も、その不満顔は何なのさ。
「と言っても、薬草とか毒消し草とか、普通のものしか入ってないよ」
他には非常用のキメラの翼が二枚に、魔物除けの聖水くらいかな。どれも旅人にとっては基本的なものだ。
「あ――」
一つだけ、異質なものがあった。それは、キメラの翼で送られてきた紫色の宝珠。送り主は兄さんだと思うけど、使い道や価値なんかは見当も付かない。
「あー、これこれ! やっぱり、あたしの勘は間違って無かったね」
まあ、その才能は凄いものなんだろうけど、真っ当な道で活かす手段が少なそうだよね。
「ってことだから、ちょーだい♪」
「可愛く言ってもダメ」
「ケチ~」
「ケチって……これだけは国が買えるくらいのお金を積まれてもあげられないの。何処に居るかも分からない兄さんを探す為の、たった一つの手掛かりなんだから」
「あんたの兄さんって、ふーてんさんか何かなの?」
また、表現が古いなぁ。
「んー。身内を呼ぶのにはアレだけど、勇者だよ。アリアハンに住んでるならオルテガって知ってるでしょ。兄さんがその長男で、僕が次男」
「うっそだ~。勇者オルテガって言ったら、メタルスライムも裸足で逃げ出すって言うくらいの猛者じゃない。あんたみたいななよなよした男の、何処にそんな血が流れてるのさ」
「いや、メタルスライムは元々良く逃げ出すよね。そもそも、足なんてないし。それに随分と酷いことをサラリと言ってくれてるよね」
これだけ淡々と揚げ足を取るっていうのも、意外に疲れるものだと思う。
「ん? でも、その勇者の次男坊が旅装束でルイーダさんのところに居たってことは、ひょっとしてアリアハンを出る気なの?」
「まあね。だから、この宝珠は絶対にあげられないよ。大体、君、義賊なら悪い人から盗りなよ」
「ん~……」
あれ、ひょっとして全然、聞いてない?
「うん、決めた。私、あんたに付いてく」
「……はい?」
人間の思考能力って、想像以上にあっさりと停止するもんだよね。
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