このドラクエ3物語(名称未設定)は、実はさりげに、随分、長いこと妄想だけはしていた話なのです。下手すりゃ五年以上ですか。まあ、妄想っていうのは恐ろしいもので、細かい部分の詰めは一切、進まなかった訳ですが。
( ・ω・) 結局、八割九割は書きながら考えてるよ!
「やぁ、アレク、しばらく見ない間に随分と大きくなったね」
「お久し振りです、ルイーダさん」
酒場内に入った僕は、先ずカウンターに座る主に声を掛けた。
「フフ。随分と女を泣かせそうな顔になってきたじゃないか。血は争えないねぇ」
父さん。何で僕は、こんなところで針のむしろを味わっているんでしょうか。
「それで、早速なんですけど――」
「ああ、話は聞いてるよ。仲間が必要なんだろ?」
「ええ」
自慢にはならないけど、僕は武芸に全く自信が無い。二年前、十三歳になるまでは魔法使いになるつもりで勉強をしていたからだ。アレル兄さんが行方知れずになって、僕に勇者としての働きを期待される様になってからは一通り学んできたけど、所詮は付け焼き刃だ。十年単位で鍛え上げてきた人から見れば、お遊びの域を出ていないだろう。
「皆、聞いとくれ。ここに居るのは、あの勇者オルテガの次子アレクだ。魔王バラモスを打ち倒す旅に立ち上がる奴はいねぇか!」
『ひゃぁぁっほうぅぅ!』
『ウオォォォ!!』
途端、酒場内は怒号にも似た喧騒で満たされた。
「ついに、ついにこの機会が来たぜ!」
「ああ。オルテガさんは一人で行っちまうし、アレルの奴もトウカと二人だったからな」
――え?
「父さんと兄さんは、ここで仲間を集めてないの?」
「そういや、そうだったな。いや、一応二人共、来るには来たんだがな。恐らく、眼鏡に適う奴が居なかったんだろう」
「姉御ー、何を言っちゃってますかなぁ。俺のこの筋肉を見ても使えないと言いやがりますか?」
たしかに、その男の腕はそこいらの丸太程はあり、僕の胴回りとも良い勝負が出来るだろう。
「見せ掛けだけの筋肉じゃありませんぜ。このガラス瓶くらいなら、握るだけで潰してみせ――」
「やるのは勝手だが、後片付けは自分でやれよ」
「へっへ。まだ酒が残ってるのに、そんなもったいないことはしやせんぜ」
屈した、今、間違いなく大男がルイーダさんに屈した。
「ね、ねぇ、一つ聞いていい?」
「ん、どうしたい。俺達は、おめぇがガキだからって見下したりしねぇぞ。何しろあのオルテガさんの息子だ。必ず強くなるだろうよ」
その言葉が、小さな針となって、僕の心に突き刺さった。
「怖くないの? 相手は魔王バラモスだよ? 父さんや兄さんだって生死不明だし、生きて帰れる保証なんて無いんだよ?」
「ハーハッハ。そりゃ死ぬこたぁ有り得るだろうよ。だが、んなもん、漁師や木こりでもあることだろうが。しかし、そいつらと違って、バラモスを倒すことが出来りゃあ、一発で英雄だ。多少の危険に怯えてこんな大チャンス見過ごせるかってんだ」
「おぅよ! アレク、俺を連れてけ! こう見えて、昔はポルトガの僧兵部隊に居たことがあってな。回復魔法と武器が使えるぜ」
「てめぇ、横取りする気か。なぁ、アレク。最後に物を言うのは結局、腕力だぜ。俺なら、はぐれメタルだろうと一発でミンチにやるよ」
「あ、え、あー……」
「おいおい、そんな纏めて言ったところで混乱するだけだろうよ。とりあえず希望者はこっちに集まって、自分の売りをこの紙に整理してくれ。その上でアレクが一人ずつ面談して決めりゃ良い」
「ちっ、姉御にゃ敵わねぇな」
ブツクサと文句を言いながらも、皆は指示通りに一ヶ所へと集まった。流石に、こんな酒場を切り盛りするだけあって、ルイーダさんの迫力は相当なものだ。
「アレク、よーく見ておくんだよ。もしかすると、あんたは仲間に命を救われるかも知れないし、逆に落とすかも知れない。仲間っていうのは、そういうもんだ。少しでも違和を感じたら、悪いことは言わない。何日旅立ちを遅らせても良いから、じっくり探すんだ。オルテガやアレルがここから選ばなかったのは、つまり、そういうことだ」
「は、はい」
そうだ。僕は、仲間を集めるということを何処か漠然と考えていた。只、強ければいいってもんじゃない。信頼に値する人じゃないとダメなんだ。
「失礼しますわ」
不意に、扉が開く音と共に、女性の声が店内に響いた。
「この辺りに、教会は御座いませんこと。出来ましたら、アリスト派が望ましいですわ」
女性は、歳で言うと二十歳くらいだろうか。全体的に露出が少ない旅装束だったけど、スラリと伸びた四肢が見て取れるほどに身体付きのバランスが良かった。
「旅の僧侶かい? 教会は互助制で、同じか敵対してない会派なら見ず知らずでも泊めてくれるらしいな」
「ええ、その通りですわ。少々、長逗留になるかも知れませんので、少しでも路銀を節約しようと思いましたの」
「そうか。アリスト派なら、裏手をまっすぐ行ったところにあったはずだが。まー、長く居るってんなら、酒飲む時はうちに来いや」
「生憎と、わたくしの会派は祭りの時以外にお酒を飲むことを禁じておりますが、御食事くらいでしたら」
女性は、そう言うと、にっこり微笑んで踵を返した。うーわ、それにしても美人だったなぁ。
「おい、アレク」
「え?」
何か、遠くから声が聞こえた様な。
「美人に弱いのも、血筋か――」
「え? え?」
何だか、ルイーダさんが一人納得しているけど、何があったの?
「うぉぉし、アレクゥ。順番をクジで決めたぜぇ。とっとと始めて貰おうか」
「あ、はい」
こうして、僕は仲間を見つける為、酒場の皆と話をすることになったんだ。
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