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 マッスル! マッスル! マッスルァ!

( ・ω・) 書くことが思い付かない時は、発狂した振りをして誤魔化すのが私流

「はぁ……」
 一通り面接を終え、トボトボと家へと向かっていた。もう周囲に夜の帳は降りきっていて、月明かりがやけに眩しい。
 結局、話をしたのは十八人だっただろうか。どの人も立派な経歴の持ち主で、僕なんかよりずっと強いと思う。だけど、何かが違っていた。巧くは言えないけど、ピンと来ないって言うか。どうしてこんな気持ちになるかは、良く分からない。
『そう難しく考えるな。今日来てない奴もたくさん居るんだから、一週間くらい掛けてじっくり探してもいい。声は掛けとくよ』
 ルイーダさんの言葉を思い起こし、もう一度、溜め息をついた。今日中に集めて、明日の朝に出るつもりだったんだけどなぁ。自分の考えが甘過ぎたことに落胆したくもなる。
「それにしても――」
 父さんと兄さんがあそこで仲間を選ばなかったのは、どういうことなんだろうか。そりゃ、明らかな足手まといなら居ない方が良いんだろうけど、手練れも多いはずだ。旅を重ねて行く内に強くなる人も居るだろう。父さんは一人で旅立ったって言うし、兄さんも、幼馴染みのトウカ姉さんとの二人旅だ。探しには行ったみたいだから、仲間は欲しかったんだろう。だったら一体、どんな理由で――。
「ん?」
 不意に、何かに蹴躓いた。何だか、随分と柔らかかったんだけど、犬や猫にしては鳴き声は聞こえなかったし――。
「わ!?」
「どうなさいました?」
 それは、女性の脚だった。薄暗くて気付かなかったけど、街路樹に凭れる格好で伸ばしていて、ちょうど脛辺りを蹴飛ばしたことになる。いや、踏み付けなくて良かったなぁ。
「あれ?」
 その女性は、つい先刻、酒場で顔を合わせた旅の僧侶だった。たしかさっき――。
「裏手の教会に泊まるって言ってませんでしたっけ。こんなところで、何をしてるんです?」
「それが困ったことに、最近、閉鎖されてしまったみたいですの。他の教会は会派が合いませんし、ほとほと参ってますわ」
 内容の割に、笑顔は絶やしてないし、そこまで大変な事態に感じられないのはどうしてだろう。
「不安な時代だからこそ、私達、宗教家の勢力が増大するというのも、絶対ではないものですわね」
 ん? ちょっと不穏当な発言が聞こえなかった?
「それで、疲れて休憩を」
「いえ、いっそここで夜を明かそうかと思いまして」
 のほほんとした性格に見えて、割と無茶な人だなぁ。
「えー……差し出がましい様ですが、宿くらい幾つかありますよ?」
 魔物達の横行で旅人がめっきり減ったものの、これだけの街なら宿泊施設くらいはある。懐には響くかも知れないけれど、女性がこんなところで夜明かしとか無茶苦茶だ。
「それが、何軒か御伺いしたのですが、何処も満室でして。運には自信がありましたのに、こういう日もありますのね」
「え~……」
 これは本格的に困ったな。僕には関係無いと言ってしまえばそれまでだけど、ここで見捨てるのも後味が悪い。
 ルイーダさんに頼めば何とかしてくれるだろうか。でも酒場はこれから忙しいだろうし、悪いよなぁ。
 色々な考えが巡りに巡った末、口から漏れた結論は――。
「僕のうちに泊まります?」
 自分でも驚く程に、軽薄極まりないものだった。
「宜しいんですの?」
「あ、え、いや、うー……」
 言ってはみたものの、随分と大胆というか際どい発言だった。うわー、顔から火が出てきそう。
「わたくし、遠慮しませんわよ」
「だ、大丈夫。父さんと兄さんの寝床が空いてるから」
 そ、そうだよね。僧侶だもん。人の家に泊めて貰うことも珍しくないよね。
「あ――」
「どうしました」
「下心を持ったりしたら、めっ、ですわよ」
 心の内を見透かされたかの様に的確な言葉を口にされ、僕の心臓は、爆ぜる様に大きく鳴った。

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