アレルとアレクの兄弟って、名前が分かりずれーよと、-keighさんに言われました。ロトシリーズの勇者の名前がややこしいのは伝統なのです。小説版では、1がアレフ、2がアレン、3がアレル、ロトの紋章の主人公がアルスで、ジャガンの本名がアラン(一応ネタバレっぽいので白文字)なんです。
( ・ω・) 私は倣っただけで、何も悪くないアル
「いや、話は良く見えてないんだけど、このお宝を見付けたのってあんたの兄さんだよね」
「多分ね」
「それであんたも、その兄さんを追い掛けて旅に出る、と」
「うん、そうなるかな」
「っていうことは、あんたに付いてけば、こんな感じのお宝がたくさん見付かるってことじゃない」
「はい、ちょっと待った」
な、なんていう短絡思考。脳構造がちょっと羨ましい。
「それに最近、ちょっと派手に仕事しすぎて、ほとぼりを冷ましたいな~、なんて思ってみたり――」
「そっちが本音だよね、間違いなく」
何となく分かってきた。この子は、自分中心の論理でしか物事を考えてないんだと思う。
「あのね、僕は物見遊山に行く訳じゃないの。最終目標は、魔王バラモスの撃破なんだよ。死んじゃうかも知れないの」
こんなことを言ってるけど、僕にも死の実感なんてものはない。霊峰の高さは、遠くからでは実感できない感じに似てるかも知れない。
「え~、良いじゃん。私、便利だよ。お宝が何処にあるか何となく分かるし、逃げ足の速さは自信あるし」
前者はともかく、後者は良いのかなぁ。
「それに、近い将来、怪盗にクラスチェンジするあたしはお買い得だよ~」
どうでも良いけど、怪盗対魔王って、絵的な意味で凄いよね。
「大体、会ったことも無い奴が相手なんだから、そんな難しく考えてもしょうがないって。
なるようになるし、なるようにしかなんない。
これ、あたしのモットー」
「あ――」
ルイーダさんの所で感じたモヤモヤの一つが、分かった様な気がした。あそこの人達は、たしかに強い。そして、バラモスのこともそれなりに知っているんだろう。
だけど、シスは僕と同じだ。漠然としたものは持っているんだけど、その本質を自分では理解していない。言い換えると、価値観が近いんだ。
何だろう、凄く、しっくり来る。あぁ、でもこの子、泥棒なんだよなぁ。
「分かったよ」
色々な葛藤が心の中で渦巻いた末に、僕は一つの結論を出した。
「一緒に行こう」
驚くほど自然に、言葉を口に出来た。
「お、話が分かるねぇ。うんうん、それって良い男の絶対条件だよ」
物分りが良いだけの男は、翻弄されるだけじゃないのかなんて思ったのは内緒だよ。
「だけど、もう盗みはしないこと。これだけは絶対に守って貰うよ」
「え――」
ちょっと、何でそこで固まるかなぁ。あー、もう唸ったりして、何を考えてるのさ。
「悪徳商人はカウント外だよね?」
「ダメだから!」
こうして、僕の最初の仲間は、盗賊のシスに決まったんだ。
◇
「母さん、行って来るよ」
夜明け前のまだ暗い刻限。僕は母さんの寝室の扉を少し開けて、そう言葉を掛けた。
シスと旅に出ると決めたことで、一つの世界が開けた気がした。仲間っていうのは、見付けるものじゃなくて、出会うものなんじゃないかって。
だったら、仲間を特定の場所で見付けるなんて意識は持たずに、世界中の人と自然に触れ合う方が良いんじゃないかって思えたんだ。
だから最初の予定通り、今日、旅立ってしまおう。最初は二人きりでも、きっと何処かで出会えるはずだよね。
別れの言葉を一方的に告げるだけなのは心苦しいけど、これが僕の限界だった。ごめんね、母さん。きっと、生きて帰ってくるから。
「行ってらっしゃい、アレク――」
予想していなかったその言葉に、全身が硬直し、ビクリと脈打った。
「……元気でね」
涙が零れそうだった。だけど、僕はもう行くって決めたんだ。
母さん、爺ちゃん。行ってきます。
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