髪とヒゲの成長を遅くする、或いは止める薬は完成している! しかし床屋とカミソリ業界の陰謀で世には出れないのだ!!
( ・ω・) 髪を切りに行く度、この陰謀論が頭を掠めてしょうがないです
「では、これからの方針について再確認致しますわよ」
レーベの村に辿り着いた僕達は、とりあえず宿をとり、一息ついたところで喫茶室に集まっていた。
テーブルの上に世界地図を広げてくれるアクアさん。余り馴染みの無い世界の姿を、僕達は興味津々といった感じで覗き込んだ。
「御二方も御存知の通り、アリアハンの位置は、ここになりますわ」
言って、地図の真ん中よりやや右の下方を指差した。そこにある大陸は思いの外に小さくて、世界の広さを感じさせられてしまう。
「十三年前、オルテガ様は武装客船に乗って、ランシールを経て、バハラタへと迎いましたの」
ツツツと、指を左に走らせ、大陸にぶつかったところで上へと滑らせた。
「ですが近年、魔物達が凶暴化したことで、船舶の往来は激減し、アリアハンが世界から孤立する形になりましたの」
「へー、世の中、そういうことになってたんだ」
シスって、生粋のアリアハン人のはずなんだけど、何で外国のアクアさんの方が事情に明るいんだろう。
「そこで四年前、アレル様が旅立った際は、いざないの洞窟にある旅の扉を利用しましたの。かく言うわたくしも、ロマリアからこちらには、それで参りましたのよ」
それは僕も、兄さんの手紙を読んで知っている。たしか、魔法の玉っていうのを使って封印されていた壁を砕いたって書いてあったはずだ。
「僕達も、それを通ってロマリアに行くんだよね」
「ええ。バラモスが居ると言われるネクロゴンドは、イシスの南、暗黒大陸とも呼ばれる場所にあると言われていますわ。そこに至る手段を探すというのが、当面の目的になると思われますの」
伝え聞いた話では、父さんはこのネクロゴンド近くの火山に落ちて死んだということになっている。だけどそれはあくまで伝聞で、死体が確認された訳じゃない。淡い期待だと分かっていても、僕は世界の何処かで父さんが生きていると信じたかった。
「漠然とした目標ですが、ロマリアからポルトガへ向かい、船を手に入れたいところですわね」
「船?」
「ええ、もちろん船員を含めてですわ。沿岸で漁をする程度の船は大抵の国で作られていますが、世界を回れる程のものとなりますと、ポルトガの独占事業ですものね」
「そうなんだ。知らなかったなぁ」
とりあえず、盗賊って、世界情勢を知らなくても成り立つ商売だってことは知ることが出来たかな。
「旅の扉、か。まあ、兄さんが壁を砕いたらしいし、特に問題は無いんだよね」
洞窟の中に幾らか魔物が居るらしいけど、アクアさんは一人で通ってきたから、そこまでの強さじゃないはず――。
「ところが、そうは問屋が卸しませんの」
アクアさんって、たまに変わった表現をするよね。
「最近、人心の乱れから治安が悪くなっているというのは御存知だと思いますが、この近辺も例に漏れず、山賊達が屯していますの」
「さ、山賊ぅ?」
人間って、何で戦うべき共通の敵が居る時に、こうも簡単に堕落出来るのかなぁ。
「わたくしがこちらに来た時の様に、こっそり抜けるというのも一つの手ですわ。
ですがここは、今後の安定を考えまして、少し懲らしめるべきだと思いますの」
たしかに、そんな奴らが居座っていたら、旅の扉は更に使いづらくなり、アリアハンの孤立化が進むだけだろう。勇者として、一肌脱ぐべきところかも知れない。
「ところで、ここに義賊が居るんだけど、何か有効に活用できないかな?」
「ん~、同じ賊でも、わたくしには返答しかねますわね」
「ひょっとして、何かバカにされてる?」
必ずしもそうとは言い切れないけど、否定も出来ないかな、なんてことを思ってみる。
何にしても、こうして僕達の当面の目標は、いざないの洞窟近くの山賊退治に決まったんだ。
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