さりげなく、この作品のシスさん(職業盗賊14歳)は、本名システィといい、略称というか、愛称がシスということになっていたりしました。完全に切っ掛けを失ったので、本編でこの設定を語る日が来るのかは謎ですが。
( ・ω・) 大丈夫! こんな設定、使わなくても、多分、困らない!
「ん……」
朝日が目に入り、眩しさで意識が覚醒した。
ふわぁ。たった今、賊達は警備兵に引き渡したし、これで僕達の仕事は一段落だ。詰め所の仮眠室を借りて一眠りしたら、旅を再開するつもりだ。
「え~。お宝、一個も持ってっちゃいけないの~」
「あのね、君は義賊でしょ。完璧には難しいかも知れないけど、出来るだけ元の人に返してあげないとね」
もう、早くもこの遣り取りが定番となりつつある気がする。
「汝――」
不意に、声を掛けられた。
「名は、何と言う」
それは、見張りに立っていた武人風の男だった。後ろ手を縛られたままこちらを睨みつけてきている。
粗野な野郎達が多い中、この人だけは何処か異質で、口調も乱れたものではなかった。まあ、先に自分の名を言うのが、礼儀なんじゃないかとも思うんだけど。
「アレク。職業は……旅人、かな」
自分で自分を勇者と呼ぶのは、流石に少し気が退けた。
「何ゆえ、我々を壊滅させた」
「何でって――」
そんなことを答えることになるとは思っていなかったので、少し間が空いてしまう。
「特には無い、かな。悪いことをしている人を、知ってて見逃すことは出来なかったというか」
「では問う。悪とは何だ。誰もが、その心に正義の心を持っておろう。正義同士がぶつかり合った時、その相手は悪と言えるのか」
む、難しいことを言う人だな。山賊退治って、そんなガチガチに考えなければならない様な話だったっけ。
「何を聞きたいのかは良く分からないけど、一つだけ言えることはあるよ。僕は、僕の家族と友達を苦しめる存在を許さない。町や国が疲弊すれば、痛みは回ってくるし、それは世界に話が広がっても同じことなんだと思う。だから、僕は君達山賊や、魔王バラモスなんかを認める訳にはいかない」
「そうか……」
言って男は、がっくりと肩を落とした。
「汝の様な男に、もっと早く出会えていれば、この身を落とすことも無かったであろうに」
その発言に、違和を感じた。
「僕は、あなたの過去に何があったか知らないし、敢えて聞こうとも思わない。だけど、変われるというのであれば、今からでも遅いということは無いと思う。罪に対する償いが済んで、まだ気持ちが変わってなければ、足を踏み出せばいいと思うよ。」
「――!」
「アリアハン城下に、ルイーダさんっていう、酒場を営業してる人がいるんだ。もしあなたが武芸に自信があるなら、そこに行ってアリアハンの人達を守ってみて欲しい」
「考えておこう――」
年上の人に、随分と偉そうなことを言ったかなとも思う。だけど、この人は迷っていたんだろう。僕には背中を軽く押す位のことしか出来ないけど、何もしないよりは良いよね。
「流石はアレク様ですわ。言うことに重みがありますわね」
「だ、だから様はやめてってば」
アクアさんとの掛け合いに、男の人は少し微笑んだ様に思えた。願わくば、彼が今の気持ちを失いませんように。
連行される後姿を見遣りながら、僕はそんなことを思っていた。
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