前にも書いたかも分かりませんが、月読の話を少々。あやつ、超良家のお嬢様で、才能は日本トップレベル、金は持て余すほどあり、優雅だか何だか良く分からない趣味に注ぎ込む程の暇も持っています。ぶっちゃけて言うと、世間的なステータスは殆ど持ち合わせてると言って良いでしょう。
( ・ω・) これだけあると、逆に人間腐るという、風刺だったんだよ!
「ポルトガのぉ。大方、海鮮料理が目当てなんじゃろ。あれは絶品じゃ。儂も何十年か前に食べたきりじゃて、久々に食ってみたいのぉ」
お爺さん、軽く冗談を言わないと、死んでしまう難病か何かなんですか。
「しかし、船を手に入れるのは容易ではないじゃろう」
そして、何事も無かったように、話を本筋に戻さないで下さい。
「それでも、わたくし達は、今、世界で何が起きているか、この目で確かめなくてはなりませんの。その為には、自分の意志で動かせる船が不可欠なのですわ」
「言いたいことは分かるが、最近、海はすっかり危険になってのぉ。海洋国家ポルトガとはいえ、例外ではないのは知っての通りじゃ」
そ、それは分かってるつもりなんだけど、足や馬を使って地続きで行ける場所は、旅の扉を使っても限られている。世界中を回っていて、且つルーラが使える人を探すのも手かも知れないけど、結局、ネクロゴンドへ足を踏み入れて帰って来た人は居ないだろう。何にしたって、船が無いといずれ手詰まりになるのは目に見えてるんだ。
「そもそも、お主達、金は持っておるのか? 小型で良いと言っても、世界を回れる船に船員となると、安くは無いぞい」
「そ、それは――」
アリアハン国王から預かったお金は、数人を一年程度雇い入れるのが精一杯だ。船なんかには手が届きやしないし、後のことを考えれば無一文になるのも心もとない。
「アレル様は、どうなさいましたの?」
「え?」
ちょっと待って。たしか兄さんは――。
「東方の国、バハラタに行って、黒胡椒と引き換えに船を貰ったはず――」
手紙に書かれていた情報を、記憶の底から引きずり出した。
「それって、本当に黒胡椒なの? 何か凄く危ない粉だったりしない?」
シス。人の身内の品格を、やたらめったに汚さないで欲しいんだけど。
「ひょひょひょ。分かりづらい話かも知れんが、東方では簡単に手に入る香辛料の類も、こちらでは数が少ないが故に高騰するんじゃ。魔物達が増えて、更に手に入りにくくなったしの」
「へー」
ひょっとして、兄さんの真似をすれば、資金の面は心配なくなるかも――やっぱりとりあえず、ポルトガに行ってみよう。
「言っておくが、アレル殿の方法を倣うのは無理じゃぞ」
「な、何でですか」
「去年、アッサラームとバハラタを隔てる山脈近郊で、大規模な地震があっての。唯一あった地下道が埋まってしまったんじゃ。幸い、番をしとったドワーフは無事じゃったが、陸路であちらへ向かうのは、まず不可能じゃ」
「……」
い、いや、だからこそですね。黒胡椒に莫大な値段が付いて、それで船を手に入れれば、バハラタへも向かえ――わー! 自分で考えてて良く分からない!
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