最近、ちょっと思うのは、桜井母のこと。茜、岬を育てた両親、特に同性の母って、どんな性格してるんだろう。ちょっと想像がつかないや。何しろ、一人ならともかく、二人共、ああいう感じである以上、血統や環境の影響が濃厚な訳で。
( ・ω・) それを言ったら、七原家も大概だろうと思ったら、きっと負けです
「わたくし、思いますの」
「な、何を?」
「ヒャドを使える方が、夏場、氷屋さんを開けば、確実に商売繁盛ですわ」
「そ、それって、今、言わないといけないことじゃないよね?」
御仕事を商人に変えようっていう話なら、別口で相談に乗るけどさ。
「とりあえず、中に!」
ここに居座っていては、的になるだけだ。相手が一人だというのであれば、地の利を活かされたとしても、挟み撃ちにされる心配はない。内外双方の危険度を総合的に判断して、僕は障害物の多い塔内部を選択した。
大熱量の閃熱の力が大地を灼いたのは、飛び込んだ数秒後のことで――自分の判断が正しかったことに、僕はほっと胸を撫で下ろした。
◇
「言い忘れていたことがありますわ」
塔に入り込んで幾らか経った頃、アクアさんはおつかいの追加でも頼むかの様な軽さで口を開いた。
「この塔、至る所に罠や仕掛けがあると聞いたことがありますの」
「……」
え?
「そ、そういうことは、先に言って欲しかったなぁ……と言うか、何で灯台にそんなものが」
実務上、特に役立つものとも思えない。
「逆ですわ。元は灯台だったからこそ、必要でしたの」
「はぁ」
何だか、良く分からなくて気の抜けた返答をしてしまう。
「灯台とは、文字通り水先案内人を買って出る守り人ですの。言い換えれば、心無い輩がその自由を奪えば、全てを狂わせることも可能ですわ」
「あ~……」
具体的な説明をされると、納得出来ないこともない。例えば、海賊の類が灯台を占拠すれば、商船なんかを誘導して、悪さが出来る。他にも、国家転覆を狙う連中が、要人が乗った軍船、儀礼船を、という展開も考えられる。伊達や酔狂で、迷宮みたいな造りになってるんじゃないんだと、この年で初めて知った。
「って話だから、シス、あんま壁とか弄らない方が――」
「ん~。ここら辺が匂うなぁ」
君は、話を聞く耳を持ってないの!?
「ペコペコ」
そして、そんなあっさり、ヘコむ壁のスイッチを見付けないで!
「ですの?」
「わ!?」
瞬間、床が抜けた。幸いにして、僕とアクアさんは穴の縁に居たから辛うじて躱せたけど――本当、落ちてたと思うとゾッとする。
「シス~。だから、軽はずみに触っちゃダメだってば!」
今回は運が良かっただけで、次も問題が無くいくとは言い切れない。
「う~んと――」
そして、又しても唸り出しちゃってさ。今の僕の発言の、どこら辺に考え込む要素があるのさ。
「ちゃんと確認してからなら良いってことだよね?」
もうやだ、この問答。
だー! アクアさんも、そんな微笑ましいものを見るみたいな目で眺めてないで、何とか言ってやってよ!
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