最近、肩凝りというか、全身が凄い勢いで固いです。うぐっ、け、血流が悪い……。
( ・ω・) 年か、年なのかとは、絶対に認めたくなーい!
「ん~。この潮の香り、何か良いテンションになってくるね~」
僕とシスが育ったアリアハンは海に近く、空気の流れ次第でで潮風も舞い込んでくる。郷愁を覚え、気分が安らぐのも、必然のことなのかも知れない。
「ですが、この時期で良かったですわね」
「うん?」
「もし冬場でしたら、この近辺は相当の厳寒地域ですので、こんな服装では凍えていたかと思われますわ」
ぼ、僕、寒いのは余り得意じゃないんだよなぁ。だからヒャド系魔法、ちょっと苦手だったりなんて――。
「それにしても、ね」
軽々しく隠れ里を探すなんて決めちゃったけど、当然のことながら、その場所を殆どの人が知らないからこそ隠れ里な訳であって――小高い丘から見下ろす広大な林野に、ちょっと気が滅入ってしまう。
「犬でも連れてくるべきだったかなぁ」
聞くところに依ると彼らは、僕達人間から見ると、考えられないくらい強力な鼻を持っているらしい。軍用犬なんかは、その特性を利用して活躍してるらしいし、何かのツテで借りてこれれば良かったかもね。
「ん?」
「どうしたの、シス」
「何かこっちの方から、妙な人気を感じたんだけど」
「……」
どうもこの子は、猫だけじゃなくて、犬の特性も持ち合わせてるみたい。
「キャー!?」
不意に、甲高い声がした。
「に、に、に――」
それは、細身の女の子だった。木々の狭間で、腰を抜かしたのか、尻餅をついたままこちらを見上げている。
あれ、この子、耳が珍しい形を――。
「人間ー!?」
少女は、鼓膜を破りかねない程の大声を上げると、立ち上がることもなく、仰向けのまま僕らから遠ざかかっていく。き、器用だなぁ。何か大きな虫みたい。
「あの方――」
「どうしたの?」
「もしかしなくても、エルフですわよね」
「……」
考えてみれば、人間のことをわざわざ人間と呼ぶのは、人間以外の種族だけだ。魔物達は、自分のことを魔物なんて呼んだりしないよね。
「お、追わなきゃ」
予想外の出来事に対応が遅れるのは、僕の悪い癖だ。視界から消えかけていたその少女を見失わない様、僕達は駆け足で追い掛けた。
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