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 囲碁将棋の段位規定が今一つ分からないので、雑学として調べてみる。ほうほう、七、八、九段クラスは、勝ち星だけじゃなく、タイトル戦動向に依っても決まるのか。何々、日本棋院は2003年に規定を改定。三大タイトル(名人、本因坊、棋聖)リーグに入ると、無条件で七段――。

( ・ω・) 塔矢アキラ七段が、誕生した瞬間である

「これぁ、取引だ。てめぇらが、この先、万に一つバラモス城へ行く手段、ないしは取っ掛かりになりそうな情報を得たら、俺にも寄越せ。そんかわし、俺は俺で、何かを見付けたらくれてやる。もちろん、てめぇらがそれまで生きてたらの話だがな」
 願ってもない申し出と言えた。そもそも、バラモスを倒すのは誰でも良い。父さんでも、兄さんでも、僕でも。そして、目の前の魔法使いでも。契約関係に過ぎなくても、同士が増えるのは望ましいことだ。
「と言いますか、一緒に旅をすれば、何の問題も無いと思われますの」
「あぁん?」
 アクアさんの発想は、いつ如何なる時も予想の外側を突っ走ってくれる。
『こんな乱暴な奴と一緒なんて、ぜーったい、ぜーったいにヤダー!』
「って、シスが起きてたら、ふくれっ面で言うと思うんだけど」
「物真似、お上手ですのね」
 うん、昔から、人の特徴を捉えるのは割と得意な方でさ。
「てめぇら――」
 微妙に蚊帳の外に置き去られた感のあるクレインが、少し頭に血を昇らせていた。
「ざけんな! 何で俺が、雑魚の守りなんざしねぇといけねぇんだ!」
「あら、たしかに今のところはそうかも知れませんが、わたくし達、これでも期待の新星なのですわよ」
 自分で言えるところが、アクアさんの凄いところなんだろうね。うん、割と本気でそう思うよ。
「チッ」
 クレインは、小さく舌打ちすると、立ち上がり、窓辺へと足を向けた。あ、あれ、本気で怒っちゃった?
「どうやら、バラモスの怖さってもんが、良く分かってねぇみたいだな」
 ギ、ギクッ。ど、どうしてそれを知ってるんだろうか。
「奴はな――」
 ベランダに立ち、右手に魔力を集中させている。え、ちょっと、何、この尋常じゃない感じ。
「この力があっても、歯が立たなかったんだよ!」
 途端、巨大な光球が飛び出し、上方へと駆け上がった。その余波は爆風となって僕達の横を擦り抜け、空気が弾ける感じさえ覚えてしまう。
「な、何があったの!?」
 事態を把握できず、慌ててベランダへと飛び出す僕とアクアさん。
 刹那、耳を突き破らんばかりの爆音がした。
 発信源が頭上だと知覚し、そちらを見遣ると、そこには何も無かった。いや、ここは、塔の中ほどだよ。上に何も無いだなんてこと、あるはずがない。
「まさか、今の魔法で吹き飛ばしたって言うの!?」
 パラパラと降って来る細かな塔の破片からして、そう判断するしかない。何て、常識外れの威力なんだ。
「イオナズン、ですのね。爆裂系魔法の最高峰――数多い魔法使いの中でも、扱える方は僅かと聞きますわ」
「ケッ。どんな力があってもな。勝てなきゃ意味ねぇんだよ」
「いえ、わたくし、評価を改めることにしましたわ」
「あぁ?」
「あなたのことを、只のチンピラさんだと思っておりましたが、今からインテリヤクザさんと認識させて貰いますの」
「どっちにしても、まともに呼ぶ気ねぇな、このアマ!」
「ツンデレヤクザさんの方がお好みですの?」
「だぁらぁ!」
 アクアさんとクレインの掛け合いが繰り広げられる横で、僕は呆然と、空を見上げていた。
 魔法使いの極みの一つと言えるイオナズンを使えるクレインと、大賢者メロニーヤ様が挑んでも、逃げることしか出来なかった魔王バラモス。今の僕と、どれだけの開きがあるんだろうか。
 喩え様の無い悠遠さを感じてしまい、僕の心は、痛い程に締め付けられた。

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