ところで、渡辺元行革担当大臣って、今、何処で何を――。
( ・ω・) おっと、夜だというのに、一体、何の来客だ?
「はぁ……」
ロマリアに帰還したその夜、僕は現有戦力の如何ともしがたい状況を思い起こし、大きく溜め息をついた。謙遜でも何でもなく、僕は自分が強いと思ったことはない。それでも、漫然と旅を続けていれば、その内に何とかなるだろうという甘い期待はあった。
クレインの強さと敗戦という事実は、現実を知るという意味では良かったんだろうけど、やっぱり気分が良くなるものじゃないよ。
「あら、溜め息をつきますと、運の良さが少しずつ下がっていくと言いますわよ」
それ、ロマリア地方独自の迷信? それとも、アクアさん個人が信じてるだけ?
「まーまー。色々あったけど、懸賞金の半分は貰えたんだからいーじゃない」
そう。結局、クレインに掛かっていた懸賞は、略取を続ける地方領主が差し向けた兵隊を、彼が追い返していたという話だったらしい。お調子者の王様はそれを信じて手配しちゃったけど、最終的には誤解が解けて領主に厳罰を与えることで決着した。何だか、権力に依る揉み消しとか、ドロドロしたすったもんだはあったらしいんだけど、そこのところはアクアさんのお爺さんに一任したもんだから、細かいところは知らなかったりする。
「あのお爺さんって、何者なの?」
「知りますと、バラモスと戦うより恐ろしい悪夢を見るかと思われますわよ」
き、気になる。気になるけど、これ以上、心労の素を増やすのも何だかなぁ。
「何にしましても、ですわ」
「うん?」
「わたくし達は、たしかにそれ程、強くは無いのかも知れませんの」
は、はっきり言われると、結構、傷付くんだけど。
「ですがアレクさんは、勇者にとって一番大切なものを、既に持っていますわ」
「え?」
虚をつかれるその言葉に、一瞬、固まってしまう。
「そ、それって」
「もちろん――」
言ってアクアさんは、僕の胸を軽く小突いた。
「勇気の心、ですわよ」
途端、心の中に、温かいものが溢れた。
あぁ、やっぱりこの人には敵わない。まだ、僕に何が出来るかは分からないけど、足だけは止めないでおこう。そんなことを思わされる、一夜の出来事だった。
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