2010
面白いもので、仮に世論調査が年齢・性別・出身地を考慮して完璧なサンプリングをしたとしても、選挙で正確に反映される訳ではありません。他所の国は知りませんが、何しろ日本の場合、地方の一票が、都市圏のそれの数倍の重みがあるのです。そして一般的に地方は保守政党を好む傾向があり……民主党もそこのところを額面では理解して、農家の戸別保証制度なんて取り入れたみたいですが、実際の地方では不評っぽい訳で。道路の地方散布が露呈し、子ども手当の満額も危うくなって、消費税増税が既定路線になってましたし、何処にばらまいて票を獲得する気なんでしょうね。
( ・ω・) ところで、投票率が下がった場合、公明以外の何処が有利になるん?
「人が背負う、希望の象徴、とかはどうです?」
「余も似た様なものであろうが」
自分でキッパリ言い切れるトヨ様って、能力が伴わなければ本気で痛い子だよね。まあ、現状でも大概と言われれば否定しきれないんだけど。
「アクアさんは、僕が勇者だって言ったけど、あれって何が根拠だったの?」
「気持ちの問題、ですわ」
「……」
感覚至上主義者の意見は、議論の場に於いて全く役に立たないことがしばしばあるよね。
「シスにとって、勇気って何?」
「んー。盗賊にとって、大胆さってそんな大事なもんじゃないからなぁ。むしろ普段通りの仕事が出来る平常心と、細心の注意が主って言うか」
「どの様な時でもことを成せるとは、胆力寄りの発想じゃの。」
勇気とは恐れる心を飲み込む器量のことやも知れぬわいな」
「き、器量……」
い、一番、自信が無い部分を突いてこられた気がしてならない。
「或いは、単に鈍いだけやも知れぬがな。
自信や希望とは楽観的勘違いと言うたのは誰であったかの」
「何だか、勇気なんてものは存在しないみたいな気分になってくるんですが」
「存外、真理やも知れぬぞ。言うなれば心に勇気という虚構の殻を纏い、言い訳とする。
とはいえ、ことがそれで円滑に運ぶのであらば、問題は無いとも言えるがの」
「うーん」
仕立て上げられたと言っても、勇者の身で勇気の存在を否定するのは、感覚的なしこりが残る。でも、論理的には妙な説得力があるしなぁ。単に、トヨ様個人の威厳に依る補正って気がしないでもないけど。
2010
明日から確定申告が始まると言うことで、鳩山総理からありがたいお言葉が。
『国民の皆、税金、払ってね☆』
( ・ω・) お前が言うな、この平成の脱税王が!
「それで、一体、何を心に溜めておる」
「あー、まあ、簡単に言うと、勇者ってなんなのかなぁ、って」
「ほぉ。中々に、面白げな問いじゃの」
今更だけど、トヨ様って、良い性格してるよね。
「ほら、普通、勇者って言ったら父さんみたいに、その腕で実績を作って自然と認められるものじゃないですか。
僕みたいに大人の思惑で勇者って称号を先に与えられて、後追いで目指さなきゃならない場合、指針が見当たらないって言いますか」
兄さんなんか、その成功例と言えるのかも知れない。だけど正直な話、兄さんと僕じゃ、性格的にも能力的にも方向性が違いすぎて、あまり参考にはなりそうもない訳で。
「世間的に言うのであれば、勇気を持つ者であるとか、勇気を与えるものであるとか言うがのぉ」
「父さんは知りませんけど、兄さんの持論は後の方ですね」
「じゃが、これを論ずるのであれば、その前に厄介な問題があるであろう」
「と、言いますと?」
「そもそも、勇気とはなんじゃ?」
「う、うーん。たしかに、何なんでしょうね」
「死を恐れぬ心のことじゃろうか。
じゃが、容易いこととは言わぬが、人が命であることを放棄し、心を捨て去れば死を死とは感ぜぬ様になるものぞ」
それって宗教国家の長が言って良い台詞なのかなぁ。
「だったら、自己を保ち、何かを成す為に恐れを抱かないって言うのは――」
「匹夫の勇という言葉もあるでのぉ。
猪武者の有り様を勇気と呼ぶのは、ちと違うのは無いかえ」
あ、あれぇ。そういや勇者になって一年くらい経つのに、勇気についてちゃんと考えたことって無かったような。
2010
一応、バンクーバーオリンピックが開幕したみたいですが、何か、五輪にしては盛り上がってないような。単に私が、冷めてるだけですかね。いや、政治がダメな方向で盛り上がってるもんで、そっちにまで気が回らないだけなのやも知れませんが。
でもまあ、何だかんだで日本人がメダルの一つも取ればテンションも上がってくるんじゃないでしょうか。基本、オリンピックが成り立つ最大の要因はナショナリズムですし。国別対抗じゃなきゃ、絶対にこんなに大々的な話にはなりませんよ。
( ・ω・) 結局、社会を成立させるのに国という枠組みは必要な気がしてならない今日この頃
「何にしても、僕の為にありがとうございます」
「余はそなたの為であれば、国を売る以外、いかなることであろうとも応じるでのぉ」
どうしよう。そろそろ愛想笑いも限界で、顔が引き攣ってきたよ。
◇
「宴って言っても、大広間を使っての大宴会って感じじゃないんですね」
トヨ様と従者に連れて来られた先は、五、六人が寝泊まりするのがせいぜいの、さほど広くない部屋だった。
うん、個人的に知らない人が多すぎると緊張するし、これくらいがちょうど良いかな。
「お主のことじゃ。余りに大掛かりなことをやろうとも、気後れするだけじゃろうからの」
わーい、流石はトヨ様。僕の考えてることなんて、余裕で見抜いてますよー。
「ま、とりあえず文句は、御馳走食べてから言おうかな」
うーん。招待されておいて文句を言う算段をするシスって、もしかして大物なんじゃないかって思っちゃったよ。
だけど、アクアさんに教育を任せて感化しちゃったら、それはそれでむしろ厄介だし、僕が矯正するしか無いのかなぁ。
「何じゃ、そなた、また面倒事を増やしておるのか」
「あ、分かります?」
「知恵は回るが器は並の男じゃからのぉ。溢れでたものが顔からポロポロと零れておるわいな」
え、本当ですか。いや、トヨ様のことだから腹の中を読んだだけの可能性も――それはそれで、充分に恐ろしい話ではあるよね。
「では宴を始めるとするかの。こまい挨拶は抜きじゃ。お主が世に生を受けたことを祝し、乾杯じゃ」
「乾杯」
言ってサカズキに唇を当て、ジパング酒を一口だけ含んだ。うん、果実酒や蒸留酒じゃなくて穀物酒らしいけど、口当たりが柔らかくて、結構、好きな部類かな。
2010
美綾的、夢の対談! アクア×茜×月読! トリオ・デ・自由人!
( ・ω・) 筆者として、責任を取りたく無いのですたこらさっさと逃げさせて頂きます
「よぅ戻ってきたのぉ。
詰まるところ余に会いたかったのであろう? うむうむ、苦しうない。」
「あはは……」
良いか悪いかはさておいて、久方振りに会ったトヨ様は、今日も全力でトヨ様だった。
「うぅぅ! ふぅ!」
そして、シスも元に戻ったみたいで、実に相変わらずだよ。
「あ、でも物資補給の合間に顔を見せに来ただけで、すぐに出ますから」
「ダメですわよ、アレクさん。ここはそんな事務的な言葉ではなく、『君に会いに来た』と言うのが正しい男の子ですの」
ごめんなさい。そんなことを平然と言える程、人間的に成熟というか、達観なんてしてないんです。
「いずれにしても、宴に出る程の時間はあるのであろう?」
「宴って、あれ、何か、お祭りの時期なんですか?
あ、収穫も終わったっぽいですし、それに感謝する何か――」
「何を言うておる。お主の誕生祝いじゃよ」
「は?」
全く想像してなかったことを言われて、間の抜けた顔と頓狂な声を晒してしまう。
「あ、そーいえば、一昨日、だったかな」
指折り数えて確認してみたけど、うん、間違いない。僕の誕生日は二日前だ。
「いや、ゴタゴタしてすっかり忘れてて。そっか、もう十六歳なんだ」
アリアハンに於ける一般的な成人年齢は十六で、兄さんも、その年で旅立った。僕の場合、特例的に一年繰り上げた訳だけど、これで兄さんが旅に出た時と、同じ年になったのか。
少しは追いつけたんだろうかと思ってはみたものの、照れくさくなって、すぐさま頭を振った。
「こうしてほぼ時を同じくしてこの国にやってきたというのも、余の日頃の行いがよいからじゃろうのぉ」
「あはは」
僕はトヨ様の下で、乾いた笑いを学んだ気がするよ。
2010
私は、大長編ドラえもんと言えば、一桁の後半辺りに慣れ親しんだ世代なのですが、割とここいらってトラウマシーンが必ず用意されてますよね。意図的かどうかはさておき。
最近のは詳しく知らないのですが、子供心に恐怖感を与えるというのも、ある意味、創作物にとって必要な物の様な気もします。鉄人兵団終盤の絶望感は異常。
( ・ω・) だから出木杉を参謀として招き入れろとあれだけ……
「個人的な見解としましては、前衛が欲しいところではありますわ」
僕達は、大海の向こう側、サマンオサの南方へと向かう為、差し当たってジパングへ戻る航海に入っていた。
クレイン達と別れた後、数日を掛けて情報収集したんだけど、結局、大した情報を得ることは出来ず、当初の決心通り、海賊の村へ行くことになったんだ。
特に海が荒れることもなく、いつも通りの、割とのんびりした船旅だった。そんな中、今後について話し合っていたんだけど、アクアさんがそんなことを話題として口にした。
「たしかに、随分と偏った感じはあるよね。僕が魔法使い寄りで、シスは肉弾戦は不向きの盗賊、アクアさんは僧侶って、バランスで言うと無茶苦茶かも」
更に言うと、元傭兵で戦士経験があるとはいえ、魔術師のクレインに、純粋な魔法使いのシルビーさん、賢者のリオール君と、あっちも大概だと思う。
「トウカ姉さんが戦えれば一番良いんだけどなぁ」
まあ、無いものねだりに近いし、しょうがないかな。
「ここは一つ、アレクさんの、見違える程の変貌を期待したいところですわ」
「う……努力は、するよ」
相変わらず兄さんの剣は重すぎて、実戦投入出来る状態には程遠いよ。
『うおぉぉい! ジパングが見えたぞぉ!!』
穏やかな一時を切り裂く様に、見張り台から声が響きわたった。
うーん、まさか、こんなに早く戻ってくるとは思わなかったなぁ。って言うか、旅に出てから二度、同じところに立ち寄るってロマリア以来かも。とっても変わってるアクアさんのお爺さん、元気にしてるかななんてとりとめの無いことを考えつつ、上陸の準備をする為、自室へと戻ることにした。