2010
SF小説家、星新一氏の作品に、いいわけ幸兵衛というのがあります。詳しい内容は伏せますが、主人公の幸兵衛さん、とにかく言い訳が上手いのです。とはいえ、論理的には破綻していて、後々、じっくり考えると言いくるめられたことに気付くのですが、その場の説得力だけは凄まじいものがあるのだとか。
( ・ω・) 政治家にでもなれば、大成しそうだと思ってしまった私が居る
「ただいまー」
ルーラで移動時間が極端に少なかったから、ほんの数刻の話だったのに、気疲れが尋常じゃないのは、不思議な話だよね。
「お帰りなさいませは、奥様の専売特許だと思われますの」
わーい、帰ってきた先も、混沌極まりないよー。
「あれ、シス。いつもみたいに唸り声あげないの?」
「なーに、言っちゃってるかなぁ。あたしともあろう人が、そんな訳の分からないことする訳無いじゃない」
ところで、チラッと見えた褐色の瓶は何かなぁ。
聞き込み続けるって別れ際に言ったよね? 何でちょっとほろ酔い状態なの?
「アクアさんも、ちゃんと注意してくれないと」
「難しい話ですわ」
「何がさ」
「シスさんは、わたくしより足が速いんですの」
え、何。声が聞こえないところまで逃げた上で飲んでたってこと?
何でそうも無駄に情熱を燃やせるのか、ちょっと分からなくなってきたよ。
「てめぇも充分、トリオ漫才じゃねぇか」
「うむうむ」
その件に関しましては、否定出来る要素が無いから困ったものだと思うんだよね。
「それでは、儂は一旦、執務室に戻るぞい」
「あ、お疲れ様でーす」
「会見人を放ったらかしてきたゆえ、どうなっておるかたしかめねばの」
え、えー。仕事投げ出してまで来たんですか。何か優先順位、間違いまくってる気がしてならないけど、アダムスさんじゃしょうがないか。
「姉さん、お帰り」
「リオール。実に衝撃的な話があるけど、聞く心の準備は出来た?」
「ん?」
わ、わー。ちょっとその話は待ったー。
「ね、ねぇ。もう夕方だし、晩御飯でも食べながら今後について話しあおうよ」
「特に、異論は無い」
ふぅ。何だか、凄く無駄な先延ばししてる気もするけど、どうしたものかなぁ。