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2009

0424
「この町の方に伺うという手段もありますけど、相場というのは刻一刻と変わるものですの」
「結局、現場に行ってみないと分からないってことか」
 成程、ね。
「よし、それじゃ次の目的地は、ポルトガだ」
 足りるかどうかは分からないけど、船の町をこの身で感じるっていうのも良いだろう。一度行っておけば、キメラの翼で行き来が可能になるしね。
「ふぅん、てめぇら、そっち行きやがんのか」
「クレインも来るよね?」
「飲み屋や賭場へ誘うみたいに言いやがんな!」
 うーん、残念。何気なく仲間に引きずり込む作戦、大失敗。
「嫌がる僕を、二度も無理矢理連れ出しておきながら、その言い草は無いんじゃない?」
「そういう趣味ですの?」
「う~、らぅ~~!」
「てめぇらなぁ!」
 ゴメン、僕が言い出しておいてなんだけど、ちょっと訳が分からなくなってきたね。
「俺ぁ、逆の方向、そうだな。バハラタからダーマにでも抜けて海沿いを進んでみることにすらぁ。しばらく、顔つき合わせずに済みそうだしな」
「お約束の、ツンデレさん発動ですのね」
「……」
 あ、クレイン、目を合わせないで、無視する作戦に出た。
「人とお話しする時は、目を見るものですのよ」
 そしてアクアさん、回りこんで覗き込んでる。傍で見ると、結構、滑稽な絵面だよね。
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2009

0423
「てめぇらのせいで、アッサラームでの楽しみが一つ減ったじゃねぇか!」
 いや、アクアさんはともかく、僕はクレインに誘われた訳で、その怒りは無いと思うんだ。
「でさ。結局、二人してどんくらい稼いだの?」
「シスのお小遣いで換算すると、数千年分くらい?」
「……」
 あ、何だか、色々考え始めた。
「それでケーキ食べようと思ったら、何個分くらい?」
「他に換算単位無かったの?」
 かなり長生きしたと仮定しても、一生に食べられる量を明らかに超えてるから、現実感は全然無いと思うんだ。
「でも、ってことはさ、ひょっとして船を買えるくらいにはなったの?」
「あ……」
 そ、そういえば、そんな目的もあったような?
「ところで、今更なんだけど、船って幾らくらいするの?」
 馬車くらいなら何となく聞いたことある気もするけど、生活から掛け離れすぎてさっぱり分からないや。
「とりあえず、軍艦は無理かと思われますわ」
 いや、真面目な顔しなくても、それくらいは分かるから。
「だけど軍艦に乗れば、海のモンスターも倒しやすくなるよね」
 海で敵に出くわす度に、兵隊が総攻撃するの? 絶対、維持費がとんでもないことになって破綻すると思うんだけど。

2009

0422
「ハハッ。何だ、君達、お仲間だったのかい。いや、資料に無かったから油断してたけど、どうやら旅のギャンブル御一団の模様だ。こりゃ、一本取られたね」
 資料って、要はブラックリスト? 本業は勇者とその連れの僧侶だなんて、言えない空気になってきたなぁ。
 だけど、これだけ一方的に負けて、表面上は平静さを保つなんて、プロはやっぱり違う――。
「つーか、帰れ」
「……」
 ゴメン、いきなりだけど、前言撤回。
「ざけんなよ! てめぇらは知らねぇだろうが、俺らの給料は歩合が多くを占めてんだよ! こんだけの負けを取り返すのに、どんだけ只働きしなきゃならんか――」
 えー、いやいや、そんな裏話を暴露されても……っていうか、黒服に取り押さえられて裏に連れてかれてるし。万事無事で仕事を続けられると良いなぁ。
「ところで、慈悲深い僧侶様として、勝ち分を返金するつもりとかは?」
「アリスト派の教義では、博打の勝ち負けを曲げる真似は許されておりませんの」
 うん、真偽の程は定かじゃないけど、違和感が無いのが恐ろしいよね。
 何はともあれ、僕の賭博場初体験は、大勝利と共に、初の出入り禁止という、ちょっとしたおまけまで付いてきたんだ。

2009

0421
「わたくし、運には少し自信がありますの」
 あ、その雄姿は見えなくても、何処かの破戒僧の姿がくっきりと浮かんできたよ。
「アクアさん! 何してんのさ!」
 大声を上げて、注意をこちらに惹き付ける。その結果、川を塞き止めたかの様に道が出来て――僕はその細い隙間を、身体を横にすることで潜り抜けた。
「あら、アレクさん。奇遇なところでお会いしますの」
「うん、僕もこういうところにお邪魔するとは思ってなくてさ」
 何だか、和やかな会話になっちゃってるけど、店側は随分と苛立ってるんだろうなぁ。
「う~……あ~……」
「ところで、シスが何か、壊れちゃってる様に見えるんだけど、何があったの?」
「お小遣いを、あっさりと使い果たしたみたいですの」
 シス、ロマリアで、博打は胴が絶対に儲かるって言ってたはずなんだけどなぁ。まあ、あの時に言ってたみたいに、スリ行為に走らなかっただけ、まだマシかもね。
「それにしても、さ」
 アクアさんが積み上げたチップの山は、僕のそれと同等か、或いはちょっと大きいかも知れない。だけど、僕はちゃんと読み切って勝ったんだよ。強運で同じことを成せるって、何か凄く釈然としないんだけど。

2009

0420
「ん?」
 稼ぎに稼いだチップを換金している最中、別の場所に人だかりが出来ていることに気付く。それにしても、そろそろ日が昇るっていうのに、皆、元気だなぁ。
「ちょっと覗いてこうか」
「出禁食らった奴の台詞じゃねぇな」
「参加しなきゃ問題無いでしょ」
 そう言って、人だかり越しに、騒ぎの中心を見遣ろうとする。だけど背が高い人も多くて、どうにも巧くいかない。
「ねぇ、何が起こってるの?」
「どうも女が一人、馬鹿勝ちしてるらしい。賭場の方も本気出してるみたいだが、にっちもさっちもいかないみたいだな」
「へー」
 何て言うか、随分とツキの無い日だね。何だかんだ言って賭場だし、因果応報なのかも知れないけどさ。
「で、と」
 その女傑に興味が湧いて、もう一度背伸びをして覗き見ようとしてみる。だけどやっぱりどうにもならない。そこで、聞き耳を立ててみることにした。えっと、何々――。
「ダブルアップは、ここまでにしますの」
「……オーケー、オーケー。何処で終えようと、それは君の自由だ。異存は無いよ」
「……」
 あれ。何か、ものすごーく、聞き馴染みのある声と喋り方の様な?
「ストレートフラッシュ、ですの」
「ハハハ。十回中三回もストレートフラッシュを出すだなんて、僕の長年のディーラー人生でも始めてのことだよ」
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