2009
「この町の方に伺うという手段もありますけど、相場というのは刻一刻と変わるものですの」
「結局、現場に行ってみないと分からないってことか」
成程、ね。
「よし、それじゃ次の目的地は、ポルトガだ」
足りるかどうかは分からないけど、船の町をこの身で感じるっていうのも良いだろう。一度行っておけば、キメラの翼で行き来が可能になるしね。
「ふぅん、てめぇら、そっち行きやがんのか」
「クレインも来るよね?」
「飲み屋や賭場へ誘うみたいに言いやがんな!」
うーん、残念。何気なく仲間に引きずり込む作戦、大失敗。
「嫌がる僕を、二度も無理矢理連れ出しておきながら、その言い草は無いんじゃない?」
「そういう趣味ですの?」
「う~、らぅ~~!」
「てめぇらなぁ!」
ゴメン、僕が言い出しておいてなんだけど、ちょっと訳が分からなくなってきたね。
「俺ぁ、逆の方向、そうだな。バハラタからダーマにでも抜けて海沿いを進んでみることにすらぁ。しばらく、顔つき合わせずに済みそうだしな」
「お約束の、ツンデレさん発動ですのね」
「……」
あ、クレイン、目を合わせないで、無視する作戦に出た。
「人とお話しする時は、目を見るものですのよ」
そしてアクアさん、回りこんで覗き込んでる。傍で見ると、結構、滑稽な絵面だよね。
「結局、現場に行ってみないと分からないってことか」
成程、ね。
「よし、それじゃ次の目的地は、ポルトガだ」
足りるかどうかは分からないけど、船の町をこの身で感じるっていうのも良いだろう。一度行っておけば、キメラの翼で行き来が可能になるしね。
「ふぅん、てめぇら、そっち行きやがんのか」
「クレインも来るよね?」
「飲み屋や賭場へ誘うみたいに言いやがんな!」
うーん、残念。何気なく仲間に引きずり込む作戦、大失敗。
「嫌がる僕を、二度も無理矢理連れ出しておきながら、その言い草は無いんじゃない?」
「そういう趣味ですの?」
「う~、らぅ~~!」
「てめぇらなぁ!」
ゴメン、僕が言い出しておいてなんだけど、ちょっと訳が分からなくなってきたね。
「俺ぁ、逆の方向、そうだな。バハラタからダーマにでも抜けて海沿いを進んでみることにすらぁ。しばらく、顔つき合わせずに済みそうだしな」
「お約束の、ツンデレさん発動ですのね」
「……」
あ、クレイン、目を合わせないで、無視する作戦に出た。
「人とお話しする時は、目を見るものですのよ」
そしてアクアさん、回りこんで覗き込んでる。傍で見ると、結構、滑稽な絵面だよね。
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2009
「てめぇらのせいで、アッサラームでの楽しみが一つ減ったじゃねぇか!」
いや、アクアさんはともかく、僕はクレインに誘われた訳で、その怒りは無いと思うんだ。
「でさ。結局、二人してどんくらい稼いだの?」
「シスのお小遣いで換算すると、数千年分くらい?」
「……」
あ、何だか、色々考え始めた。
「それでケーキ食べようと思ったら、何個分くらい?」
「他に換算単位無かったの?」
かなり長生きしたと仮定しても、一生に食べられる量を明らかに超えてるから、現実感は全然無いと思うんだ。
「でも、ってことはさ、ひょっとして船を買えるくらいにはなったの?」
「あ……」
そ、そういえば、そんな目的もあったような?
「ところで、今更なんだけど、船って幾らくらいするの?」
馬車くらいなら何となく聞いたことある気もするけど、生活から掛け離れすぎてさっぱり分からないや。
「とりあえず、軍艦は無理かと思われますわ」
いや、真面目な顔しなくても、それくらいは分かるから。
「だけど軍艦に乗れば、海のモンスターも倒しやすくなるよね」
海で敵に出くわす度に、兵隊が総攻撃するの? 絶対、維持費がとんでもないことになって破綻すると思うんだけど。
いや、アクアさんはともかく、僕はクレインに誘われた訳で、その怒りは無いと思うんだ。
「でさ。結局、二人してどんくらい稼いだの?」
「シスのお小遣いで換算すると、数千年分くらい?」
「……」
あ、何だか、色々考え始めた。
「それでケーキ食べようと思ったら、何個分くらい?」
「他に換算単位無かったの?」
かなり長生きしたと仮定しても、一生に食べられる量を明らかに超えてるから、現実感は全然無いと思うんだ。
「でも、ってことはさ、ひょっとして船を買えるくらいにはなったの?」
「あ……」
そ、そういえば、そんな目的もあったような?
「ところで、今更なんだけど、船って幾らくらいするの?」
馬車くらいなら何となく聞いたことある気もするけど、生活から掛け離れすぎてさっぱり分からないや。
「とりあえず、軍艦は無理かと思われますわ」
いや、真面目な顔しなくても、それくらいは分かるから。
「だけど軍艦に乗れば、海のモンスターも倒しやすくなるよね」
海で敵に出くわす度に、兵隊が総攻撃するの? 絶対、維持費がとんでもないことになって破綻すると思うんだけど。
2009
「ハハッ。何だ、君達、お仲間だったのかい。いや、資料に無かったから油断してたけど、どうやら旅のギャンブル御一団の模様だ。こりゃ、一本取られたね」
資料って、要はブラックリスト? 本業は勇者とその連れの僧侶だなんて、言えない空気になってきたなぁ。
だけど、これだけ一方的に負けて、表面上は平静さを保つなんて、プロはやっぱり違う――。
「つーか、帰れ」
「……」
ゴメン、いきなりだけど、前言撤回。
「ざけんなよ! てめぇらは知らねぇだろうが、俺らの給料は歩合が多くを占めてんだよ! こんだけの負けを取り返すのに、どんだけ只働きしなきゃならんか――」
えー、いやいや、そんな裏話を暴露されても……っていうか、黒服に取り押さえられて裏に連れてかれてるし。万事無事で仕事を続けられると良いなぁ。
「ところで、慈悲深い僧侶様として、勝ち分を返金するつもりとかは?」
「アリスト派の教義では、博打の勝ち負けを曲げる真似は許されておりませんの」
うん、真偽の程は定かじゃないけど、違和感が無いのが恐ろしいよね。
何はともあれ、僕の賭博場初体験は、大勝利と共に、初の出入り禁止という、ちょっとしたおまけまで付いてきたんだ。
資料って、要はブラックリスト? 本業は勇者とその連れの僧侶だなんて、言えない空気になってきたなぁ。
だけど、これだけ一方的に負けて、表面上は平静さを保つなんて、プロはやっぱり違う――。
「つーか、帰れ」
「……」
ゴメン、いきなりだけど、前言撤回。
「ざけんなよ! てめぇらは知らねぇだろうが、俺らの給料は歩合が多くを占めてんだよ! こんだけの負けを取り返すのに、どんだけ只働きしなきゃならんか――」
えー、いやいや、そんな裏話を暴露されても……っていうか、黒服に取り押さえられて裏に連れてかれてるし。万事無事で仕事を続けられると良いなぁ。
「ところで、慈悲深い僧侶様として、勝ち分を返金するつもりとかは?」
「アリスト派の教義では、博打の勝ち負けを曲げる真似は許されておりませんの」
うん、真偽の程は定かじゃないけど、違和感が無いのが恐ろしいよね。
何はともあれ、僕の賭博場初体験は、大勝利と共に、初の出入り禁止という、ちょっとしたおまけまで付いてきたんだ。
2009
「わたくし、運には少し自信がありますの」
あ、その雄姿は見えなくても、何処かの破戒僧の姿がくっきりと浮かんできたよ。
「アクアさん! 何してんのさ!」
大声を上げて、注意をこちらに惹き付ける。その結果、川を塞き止めたかの様に道が出来て――僕はその細い隙間を、身体を横にすることで潜り抜けた。
「あら、アレクさん。奇遇なところでお会いしますの」
「うん、僕もこういうところにお邪魔するとは思ってなくてさ」
何だか、和やかな会話になっちゃってるけど、店側は随分と苛立ってるんだろうなぁ。
「う~……あ~……」
「ところで、シスが何か、壊れちゃってる様に見えるんだけど、何があったの?」
「お小遣いを、あっさりと使い果たしたみたいですの」
シス、ロマリアで、博打は胴が絶対に儲かるって言ってたはずなんだけどなぁ。まあ、あの時に言ってたみたいに、スリ行為に走らなかっただけ、まだマシかもね。
「それにしても、さ」
アクアさんが積み上げたチップの山は、僕のそれと同等か、或いはちょっと大きいかも知れない。だけど、僕はちゃんと読み切って勝ったんだよ。強運で同じことを成せるって、何か凄く釈然としないんだけど。
あ、その雄姿は見えなくても、何処かの破戒僧の姿がくっきりと浮かんできたよ。
「アクアさん! 何してんのさ!」
大声を上げて、注意をこちらに惹き付ける。その結果、川を塞き止めたかの様に道が出来て――僕はその細い隙間を、身体を横にすることで潜り抜けた。
「あら、アレクさん。奇遇なところでお会いしますの」
「うん、僕もこういうところにお邪魔するとは思ってなくてさ」
何だか、和やかな会話になっちゃってるけど、店側は随分と苛立ってるんだろうなぁ。
「う~……あ~……」
「ところで、シスが何か、壊れちゃってる様に見えるんだけど、何があったの?」
「お小遣いを、あっさりと使い果たしたみたいですの」
シス、ロマリアで、博打は胴が絶対に儲かるって言ってたはずなんだけどなぁ。まあ、あの時に言ってたみたいに、スリ行為に走らなかっただけ、まだマシかもね。
「それにしても、さ」
アクアさんが積み上げたチップの山は、僕のそれと同等か、或いはちょっと大きいかも知れない。だけど、僕はちゃんと読み切って勝ったんだよ。強運で同じことを成せるって、何か凄く釈然としないんだけど。
2009
「ん?」
稼ぎに稼いだチップを換金している最中、別の場所に人だかりが出来ていることに気付く。それにしても、そろそろ日が昇るっていうのに、皆、元気だなぁ。
「ちょっと覗いてこうか」
「出禁食らった奴の台詞じゃねぇな」
「参加しなきゃ問題無いでしょ」
そう言って、人だかり越しに、騒ぎの中心を見遣ろうとする。だけど背が高い人も多くて、どうにも巧くいかない。
「ねぇ、何が起こってるの?」
「どうも女が一人、馬鹿勝ちしてるらしい。賭場の方も本気出してるみたいだが、にっちもさっちもいかないみたいだな」
「へー」
何て言うか、随分とツキの無い日だね。何だかんだ言って賭場だし、因果応報なのかも知れないけどさ。
「で、と」
その女傑に興味が湧いて、もう一度背伸びをして覗き見ようとしてみる。だけどやっぱりどうにもならない。そこで、聞き耳を立ててみることにした。えっと、何々――。
「ダブルアップは、ここまでにしますの」
「……オーケー、オーケー。何処で終えようと、それは君の自由だ。異存は無いよ」
「……」
あれ。何か、ものすごーく、聞き馴染みのある声と喋り方の様な?
「ストレートフラッシュ、ですの」
「ハハハ。十回中三回もストレートフラッシュを出すだなんて、僕の長年のディーラー人生でも始めてのことだよ」
稼ぎに稼いだチップを換金している最中、別の場所に人だかりが出来ていることに気付く。それにしても、そろそろ日が昇るっていうのに、皆、元気だなぁ。
「ちょっと覗いてこうか」
「出禁食らった奴の台詞じゃねぇな」
「参加しなきゃ問題無いでしょ」
そう言って、人だかり越しに、騒ぎの中心を見遣ろうとする。だけど背が高い人も多くて、どうにも巧くいかない。
「ねぇ、何が起こってるの?」
「どうも女が一人、馬鹿勝ちしてるらしい。賭場の方も本気出してるみたいだが、にっちもさっちもいかないみたいだな」
「へー」
何て言うか、随分とツキの無い日だね。何だかんだ言って賭場だし、因果応報なのかも知れないけどさ。
「で、と」
その女傑に興味が湧いて、もう一度背伸びをして覗き見ようとしてみる。だけどやっぱりどうにもならない。そこで、聞き耳を立ててみることにした。えっと、何々――。
「ダブルアップは、ここまでにしますの」
「……オーケー、オーケー。何処で終えようと、それは君の自由だ。異存は無いよ」
「……」
あれ。何か、ものすごーく、聞き馴染みのある声と喋り方の様な?
「ストレートフラッシュ、ですの」
「ハハハ。十回中三回もストレートフラッシュを出すだなんて、僕の長年のディーラー人生でも始めてのことだよ」