2010
一昔前まで、『暑いからって、冷たいものばかり飲んじゃダメでしょ』というのが、おかんの常套句でした。ですが昨今、熱中症の知識が一般化し、むしろガシガシ水分補給をするのが推奨されるようになった訳です。
その昔、部活で暑いからガブ飲みしたのを顧問の先生に窘められたことがあるのですが――。
( ・ω・) 今にして思えば正しい対処だったんじゃねーか、こんちきしょうめ
「この世界で一番と言えるものは、主の愛に他なりませんの」
いつものこととはいえ、この人に何かを期待した僕が馬鹿だった。
「はっはっは。面白いお嬢ちゃんだねぇ。
だけどあたしゃ神なんて信じて無くてね。合理を突き詰めた先に、そんな不確定なもんは存在しないよ。
奇跡なんてもんも、僧侶が使う呪文を、大仰に演出しただけのもんだろう?」
「それはまだ、貴女が気付いていないだけの話ですわ」
うーん、しかしここまで明確に神様の存在を否定する人も珍しいかも。
僕も不信心な方だと思うけど、居るとは思ってるもの。レイアムランドの巫女さん達も、そんな存在を匂わせてたし。
大体、魔王なんて訳分からないものが出てきた訳だけど、あれが世界最高位の存在だとも思えないもの。バラモスが一番強いなら、人間なんてとっくの昔に全滅させられてると思うし、少なくてもこんな不心得者が幅を利かせる余裕なんて残してはくれないはずだよ。
「ま、そんな話はどうでもいいよ。あたしが、あんたらの説得に応じるような奴じゃないことは分かっただろう?
今日のところは、大人しく帰んな。商売上の妨害だったら、幾らでも好きなようにやってくれ。出来るだけ、人の道を踏み外した外道な方法が良いねぇ。あたしゃ、それを全力で潰してやるよ」
ここまで言われても、反論する材料を持ち合わせていなかった。そもそも、道を外れていると言っても、スピルには相応の覚悟がある。何とは無しにフラフラとここに来た僕とは、雲泥とも言える差があるんだろう。
屈辱的な敗北感を胸に、僕達は一旦、宿へと戻ることにした。