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 長いこと、色んな物語を書いてきた気がしますが、いわゆる『お嬢様』というのは書いたことが無い様な気がします。いえ、出自が良いというだけでなく、清楚で可憐で大人しい、ステレオタイプのお嬢様です。家柄が良いだけだったら、月読なんか範疇ですが、あれをお嬢様と認めたら、本当、世界お嬢様委員会に査問を受けてしまうと思います。

( ・ω・) まあ、私が書いたら、どうせアクアみたいに軽くイッたお嬢様になるんですけどね

「アレク様。準備が整ったそうなので、客間までお越し下さいとのことです」
「あ、はい」
 召使いの男性と思しき人にそう声を掛けられて、腰を上げた。
 どうでも良いけど、立場上しょうがないといっても、様付けはやめて欲しいもんだよね。こう、背筋がむず痒くなるっていうか。
 何処までも勇者適正が無い自分に、世の切なさを感じ入ったりしてみたりもするよ。

「アレクさん。私は今が生涯に何度か訪れる、勝負の時だと実感しております」
「はぁ」
 話の全容が掴めない以上、適当な相槌を打つしかないよね。
「その内の一つが、妻との結婚でした」
「あら~」
 そして、中年男性の冗談は、今一つ理解に苦しむ部分がある。僕もおじさんと呼ばれる年齢になったら、分かるんだろうか。
「全財産を賭け、スピル一派との対決をすると決意しました」
 僕から手紙を受け取ったのが、今朝の朝一番。今はまだ昼前だっていうのに、決断が早過ぎる。僕だったら、三日と言わず、二月くらいは悶々と悩む事案だというのに、この人は何なんだろうか。これが商人として成功する為に必要な才覚だと言うなら、僕には無理だと思うんだよ。
「と言いますか、クワットさんの全財産って、具体的に何ゴールドくらいになるんですか?」
 実際に、硬貨で動かせるお金はそこまでじゃないと思うけど、この家やお店、商品、備品の価値に加えて、信用で借りられるものまで加えるとしたら、それこそ国を買い上げられそうで怖いものがある。
「正確な額は日々変動しておりますので、やや曖昧ですが、大体で良ければ、そちらの資料に」

 

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