2010
拙著、センセーショナル・エレクションの一柳綾女は、大政治家、一柳正剛の孫娘です。その設定を盛り込んだ当初は、早まったかなとも思いましたが、数年経った今は、まあ、別に問題ないかなとも思っています。一般に世襲議員は批判の対象になりますが、結局、選挙という関門を乗り越えている以上、責任は有権者にある訳で。能力第一主義を標榜するなら、世襲であること自体を否定するのも了見の狭い話になりますし。結局、政治と世襲が切り離せない問題である以上、生え抜きの公康や西ノ宮と、良い対比になるかなと思ったりもする訳です。
( ・ω・) しかしバカの遺伝子ならば、公康はサラブレッド中のサラブレッドだぞ
「いい話じゃねぇか。俺もちょっと、うるっと来たぜ」
「ん……」
まだ居たんですか、ダメなおじさん。
「良いんですか。こんな、客でもないどうしようも無い人を出入りさせて。只でさえ閑古鳥なのに、拍車が掛かりますよ」
「てめぇが言いやがんな」
こりゃまた、失礼致しました。
「じゃ、明日の朝に取りに来ます」
それまでに、やることを全て済ませて旅立とう。兄さんの手紙は、パープルオーブと同じ場所に入れて、と。
「で、あくまでもあなた達はついてくるんですね」
「うむ」
もう、背景の一部として相手をするのもやめようとも思うけど、世間体を捨てきれる程に成熟してる訳でも無くて。ま、明日までの辛抱と思えば、我慢出来ないことも無いか。
◇
「やいこら、てめぇら! ちょっと出てきやがれ!」
一通りのことを済ませて宿に帰って来た直後、最早、逐一反応する気も起きない声を耳にした。
「何ですか、あなた方は。まだ夜って程の時間じゃないですけど、他のお客様の迷惑になるので、暴挙は慎んで下さい」
いつもの様に階下に湧いていたのは、件のチンピラ二人組だった。応対する義理は無いけど、放っておくと宿のおばちゃんとケンカを始めるだろうし、仕方がない。
「こちらとしては正直、もうあなた達とは一点として接点を持つ必要性が無いのですよ。理由については、説明が面倒くさいので割愛させて貰いますが」
スピル陣営としては、僕達がクワットさんと連絡を取ったという情報をもう得ているかも知れないけど、わざわざ教えてあげることも無い。