2010
一応、バンクーバーオリンピックが開幕したみたいですが、何か、五輪にしては盛り上がってないような。単に私が、冷めてるだけですかね。いや、政治がダメな方向で盛り上がってるもんで、そっちにまで気が回らないだけなのやも知れませんが。
でもまあ、何だかんだで日本人がメダルの一つも取ればテンションも上がってくるんじゃないでしょうか。基本、オリンピックが成り立つ最大の要因はナショナリズムですし。国別対抗じゃなきゃ、絶対にこんなに大々的な話にはなりませんよ。
( ・ω・) 結局、社会を成立させるのに国という枠組みは必要な気がしてならない今日この頃
「何にしても、僕の為にありがとうございます」
「余はそなたの為であれば、国を売る以外、いかなることであろうとも応じるでのぉ」
どうしよう。そろそろ愛想笑いも限界で、顔が引き攣ってきたよ。
◇
「宴って言っても、大広間を使っての大宴会って感じじゃないんですね」
トヨ様と従者に連れて来られた先は、五、六人が寝泊まりするのがせいぜいの、さほど広くない部屋だった。
うん、個人的に知らない人が多すぎると緊張するし、これくらいがちょうど良いかな。
「お主のことじゃ。余りに大掛かりなことをやろうとも、気後れするだけじゃろうからの」
わーい、流石はトヨ様。僕の考えてることなんて、余裕で見抜いてますよー。
「ま、とりあえず文句は、御馳走食べてから言おうかな」
うーん。招待されておいて文句を言う算段をするシスって、もしかして大物なんじゃないかって思っちゃったよ。
だけど、アクアさんに教育を任せて感化しちゃったら、それはそれでむしろ厄介だし、僕が矯正するしか無いのかなぁ。
「何じゃ、そなた、また面倒事を増やしておるのか」
「あ、分かります?」
「知恵は回るが器は並の男じゃからのぉ。溢れでたものが顔からポロポロと零れておるわいな」
え、本当ですか。いや、トヨ様のことだから腹の中を読んだだけの可能性も――それはそれで、充分に恐ろしい話ではあるよね。
「では宴を始めるとするかの。こまい挨拶は抜きじゃ。お主が世に生を受けたことを祝し、乾杯じゃ」
「乾杯」
言ってサカズキに唇を当て、ジパング酒を一口だけ含んだ。うん、果実酒や蒸留酒じゃなくて穀物酒らしいけど、口当たりが柔らかくて、結構、好きな部類かな。